16歳の9月、高校を中退し、浦﨑さんはすぐに親方の造園工事会社で働きはじめた。
夏休みのアルバイトと同じ楽な仕事だろう。
甘い気持ちで働き始めたが、実際にはとんでもなかった。
仕事は、巨大なマンションや団地の造園で、外周、公園、樹木、芝生、花壇ととにかく広い。やっと工事が終わったと思っても今度は水やりもある。連日夜通しの過酷な作業が続いた。
「考えてみれば、高校生のアルバイトだから楽な仕事をまわしてくれていたんですよね。子どもだったから、そんなことも分からなかったわけです」
親方の会社は、公共工事の入札業者の下請けだった。
明るくて威勢が良かった親方は、業者からも好かれ仕事がバンバン回ってきた。受けた仕事はドンドンこなしていく。
当然、浦﨑さんの仕事も増えていく。
土地開発に伴う公共工事だ。一つの造園現場だけでも規模が大きく、10社ぐらいが関わって大人数で回していく。
当然、浦﨑さんが一番の年下。上は80歳代の超ベテランもいる。
造園は分からないことばかりだ。
1本の木を植えるだけでも大変。
木を植えるためには穴を掘らなければならない。
寸法を測って、穴を掘って工事写真を撮る。
木によって異なる肥料や土地改良材を入れる。工事写真を撮る。
大きなトラックで搬入されてきた木の樹形をチェックして、剪定して、工事写真を撮る。
この作業が延々と続く。一晩中、写真を撮り続けたこともあった。
ベテラン勢には「おにいちゃん、おにいちゃん」と、とにかくかわいがられた。現場助手をしながら、浦﨑さんは、先輩に教えてもらい、これらの作業をどんどんこなしていくようになる。
「たとえばクスノキだけでも、1本100万円と高価なんですよ。震えますよね。それでも剪定してましたからね」
樹木名、幹の太さ、性質、剪定方法までマスターして、やがて、現場をまかされるほどに成長していく。