「いつから、挫折してしまったんだろう」
インタビューの合間に、浦﨑社長は何度も首を傾けた。
一般的なサラリーマン家庭の長男として育ち、小学生のころは少年野球に明け暮れた。1番、キャッチャー。「しまっていこう!!」の自分の声で全てが始まる。試合が終わるまで気を抜けない緊張感が好きだった。首位打者になったこともあった。
スポーツだけではない。幼いころから音楽や演劇にも才能を発揮し、小4の夏休みには、大阪の国立文楽劇場の舞台に立ったこともある。船場の四姉妹を描いた華麗な舞台『細雪』に子役で出演。四女は桜田淳子さんだった。この舞台を最後に芸能活動をやめるが、同じく子役だった岩﨑ひろみさんは、朝の連続ドラマ『ふたりっ子』で主演を演じるなど有名人だ。
運動神経も良く、歌も上手くて、演技もできる。友達も多く、まさにヒーローだった。
中学校に進学。野球部に入部し、はじめはレギュラーだった。1番セカンド。
だが、彼にとってはポジションに納得いかない。
キャッチャーへの、強いこだわり。
「小柄だったし、普通に考えればセカンドですよね。でも、どうしても譲れなかった」
その頃、運悪く視力も急激に落ちた。
何もかもが嫌になった。
中2で野球部を退部する。
「そこからは、目的もない、何がしたいのかもわからない、学力も落ちて。暗い人生がはじまったんです」
ヒーローから一転、転落人生のはじまりだった。