運命を変えた1枚の黄色いチラシ
1999年、23歳で親方のもとを離れ独立。同年4月25日には「ひまわり造園土木」として事業申請し晴れて事業主になった。
とはいえ、人材もない、お金もない、請求書一つ書いた経験もない、何より仕事がない。
あるのは、「自分はできる!」という強い信念だけ。何の裏付けも根拠もないのだけれど、なぜか自信だけはあった。
とにかく仕事をしなければならない。すぐにできて、収入に結びつきそうな技能は庭木の剪定。
まず10,000円で中古の軽トラックを購入した。ホームセンターの大売出しの列に早朝から並んで5,000円の脚立、22,000円の物置をそろえた。道具を置く空き地を月5,000円で借り拠点ができた。
お金のない中、苦労してそろえた大切な道具。「手入れをして、すさまじく大事に使いましたよ」
道具を大事にする――それは今も変わらない。
次はPRだ。
仲間がイラストを描いてくれた。
「植木のさんぱつ、いかがですか?」浦﨑さんが手書きのメッセージを加えてチラシを作った。
コンビニの10円コピーで50枚500円分のチラシを作り、庭木のある大きな家を選んで一軒一軒ポスティングをしてまわった。目立つように黄色の紙にコピーして。
配り終わらないうちに、自宅の電話が鳴り始めた。
「チラシは身の丈にあったレベルで作る。盛ったらあかんのです」
「身の丈」にあった、この黄色い1枚の手作りチラシが、「ひまわり造園土木 」の運命を大きく変えていくことになる。
チラシを見て、手広く電気設備工事を手がける会社から電話が入った。
「明日、社にきてほしい」
たまたま自宅のポストに入ったチラシを見た同社の会長が、イラストを見ると若そうだ、使えるかも知れないと、一度下請け面接して確認してみるようにと社員に声をかけたのだという。
期待された仕事は、同社が架空送電線工事を行う前に、電線にかかりそうな街路樹の枝葉を切りそろえていく作業。電線には6600Vもの「電流」が流れる。危険を伴う仕事だ。
「街路樹の剪定はできるか?」
「できます!」
「すぐにやってもらいたい仕事がある」1ヶ月後に連絡があった。
「ドキドキしながら現場に行きました。高校時代の同級生2人に声をかけて、10,000円で買った軽トラに道具を積んで。今振り返ると、『すぐにやってもらいたい』って言うのは1回やってみろという現場面接のようなものだったと思います」
浦﨑さんにとって、樹木の剪定は得意中の得意分野。経験も豊富だ。
このときの「腕」を買われて、仕事がどんどん回ってくるようになった。
「会長が声をかけてくれなかったら、今の自分はない。本当に感謝しています」と振り返る。
独立して「植木のさんぱつ」からスタートし、電線にかかる樹木の剪定で収入が安定していった。
収益の柱が一本立ったころ、浦﨑さんはまた新たなチャレンジを始めることになる。